はじまりは「どんなお店にしたいのか?」を具体化すること
新しいカフェを開業するときに、一番最初に何をしたらよいでしょうか? おそらくオーナー(または店長)の頭の中には「こんなお店を作りたい!」というイメージがあると思います。 ひとくちにカフェといっても、和風や和モダン、本格英国式、アジア風、ヨーロッパ風のオープンカフェなどなど、ご存知のようにいろんなテイストのお店があります。さらに、スタンディングタイプのカフェ、しっかりご飯が食べられるカフェ、夜はバーになるカフェなど、営業スタイルやメニューによってもいろいろ。他のカフェを参考にしてもしなくても、まずはいま頭の中にあるイメージを具体化することからはじめてみてください。イメージとはアイデアでもあります。アイデアを具体化するためには、紙でもパソコンやスマホでも良いですが、それらを書き出してみることです。いくつかのアイデアがある場合は、それらすべてをランダムに書き出して、そこから徐々に絞り込んでいくという方法をとります。 例えば、基本をイタリアン・カフェとした場合に、「地中海の明るい光と風が感じられる」「デッキ風のテラス席」「青(アズーリ)をメインにしたカラー」「トマトなどこだわり野菜を使った料理」「地元の素材をできるだけ使う」「ランチは気軽に、夜は本格的ディナーも楽しめる」「お酒はイタリアワインを中心に」「ひとりでドリンクだけでもOKのカウンター」「家族で過ごせるボックス席」「ギャルソン風のスタッフが対応」などなど、思いついたことをすべて書き出し、もうこれ以上出ないと思ったら、その後は「これは少し違う」「これはどう考えてもいまは無理」といった異質なものを二重線で消していき、残された要素でお店のアウトライン(全体像)が浮かび上がるようにするのです。こういったイメージの具体化において、もうひとつ大切なことがあります。それは「店内でお客様にどんな時間を過ごしてもらいたいか」を明確にすることです。どんなに素敵な内装のお店でも、お客様に対する“思い”が伝わってこないお店は長続きしません。オーナーの「お客様にこう過ごしてもらいたい」という“思い”があり、それにお客様が共感してくれることで「また来たい」というリピート利用につながります。お客様あってのカフェ(お店)ということを忘れないようにしてください。
店づくりに大事なのはコンセプトの確立
お店のイメージが具体的になってきたら、今度はお店のコンセプトを決めます。コンセプト(concept)とは、難しい言い方をすれば「概念」という意味ですが、「お店づくりの“核”となる考え方」だと理解してください。「何が『売り』のカフェなのか?」「どんなカフェなのか?」といったことをひとくくりにして表現するのがコンセプトなのですが、できるだけシンプルに“ワンフレーズ”でまとめることをおススメします。お店の特長やイメージをワンフレーズの中にすべて注ぎ込むことはとても難しいのですが、余分な要素をそぎ落とし、推敲を重ねた言葉で練りあげられたコンセプトは、そのままお店を表現する「キャッチフレーズ」としても使うこともできます。 例えば、先のイタリアン・カフェの場合、「地中海リゾートにいるようにくつろいだ感覚で、こだわり抜いた味を楽しめる本格イタリアン・カフェ」といったようなことです。こういったフレーズがあれば、そのまま店舗の看板やホームページ、チラシなどの広告に使えますし、何よりもお店の基本方針として、内装やメニュー開発、オペレーションなどがブレないようにすることができます。コンセプトは、一方ではお店づくりの原理原則にもなりますので、このワンフレーズづくりにはぜひトライしてみてください。
コンセプトのまわりを固める~ネーミングとロゴ
ワンフレーズ・コンセプトが出来あがったら、次はそれを表現するさまざまな要素を決めていきます。 まずはお店の「名前」です。すでに決まっているのならもちろんそれで良いのですが、まだ決まっていないのでしたら、お店のコンセプトにふさわしい名前を考えてください。こちらも、なるべくたくさん出してから絞り込んでいくスタイルが良いのですが、少しこだわりたいのでしたら、図書館などにネーミング(名前を付けること)に関する本がありますので、それで調べてみるという方法もあります。それからひとつのテクニックとして、お客様が「?」と思う名前をわざとつけるという手もあります。それがコンセプトの延長線上にある名前ならば、その意味にお客様が関心を寄せることで、名前を覚えてもらいやすくなる場合もあるからです。あまり良い例ではないのですが、GTRという期間限定ラーメンが某ラーメンチェーンにあります。ガーリック・トマト・ラーメンの略ですが、インパクトはあります。さて、店名が決まったら、次はそれを「ロゴ」にすることです。ロゴとは正確には「ロゴタイプ」といい、ぱっと見た目でそれだと判断できるシンボルのことで、店名などの文字や図形を他にないように工夫して作り、看板やサイン、メニュー、Webサイトやチラシなどで統一して使うためのものです。何かの図形や絵と組み合わせて、マーク(紋章)のようにする場合もありますが、新規店舗の場合は、まず店名を覚えてもらうことが大切ですので、店名をロゴ化する方法をおススメします。 このロゴですが、しっかりとした店舗ほど、しっかりとしたロゴを使っています。いわゆるブランドと呼ばれているメーカーやお店のロゴは、どこを見ても同じものを決められたルールに従って使っています。なぜなら、それがお客様の目線からすれば、高級感や安心感につながるわけです。また、カフェなどでよく目にするのは、少し絵心のあるオーナーが自分で描き起こしたロゴを使っているケースですが、大抵の場合やはり素人の域を脱せず、完成度としては高いとは言えないものがほとんどです。自分で下絵を描くなど、アイデア出しをするのは良いのですが、最後の仕上げはプロのデザイナーに依頼して完成させるようにしたいものです。そうした方がイメージのクオリティが保たれ、飽きがこずに長く使えるロゴができるからです。少しお金はかかりますが、ロゴはお店の顔だと思って大切に考えてください。
コンセプトを内装デザインに展開する
さて、次はいよいよ店舗の内装です。まずは、デザイナーにコンセプトを伝え、同時に何か具体的な内装イメージがあるようでしたらそれも伝えます。オーナーがお店で実現したい内装イメージを伝えるためには、言葉で伝えても良いのですが、写真などの具体的な素材を用意してデザイナーに見てもらうという方法もあります。スペースや予算などの条件がありますので、もちろんそれらの写真通りにはいきませんが、デザインをする上では大切な材料になるのです。 また、「いくつかイメージはあるのだけれど、どうしたらよいか迷っている」といったような場合には、とにかく一度全部をデザイナーにぶつけてみるのも手です。デザインをする側としては、話し合いながら方向性を絞っていくことはむしろ歓迎です。少し時間はかかりますが、そういったやり取りをしていくことで、お互い心から納得できる内装デザインが完成する場合が多いからです。 さらに、もし写真などのイメージ素材を集められないのでしたら、「全体的には〇○風だけど、夜の営業も考えて少し落ち着いた感じを持たせたい」「基本はポップなイメージだけれども、テーブルやイスなどには飽きのこないシンプルな木製にしたい」などなど、出来るだけ詳しく伝えてください。 それとともに、家具や什器、装飾品などで「どうしてもこれは使いたい!」といったものがある場合は、この段階でデザイナーに伝えてください。コンセプトとは全くテイストの異なったものでなければ、それを生かしたデザインを提案してくれるはずです。
【mini column 1:オーナーのこだわりを内装に生かしたケース】
JR神田駅からほど近い場所にオープンしたウイスキーとシードルのオーセンティックBAR。ドアを開けると真っ先に目に飛び込んでくる天然木の美しいカウンターが印象的なお店ですが、ここにオーナーのこだわりがあります。このカウンター、実はオーナーの地元で古くから大切にされてきた“御神木”で作られているのですが、オーナーから「たまたま手に入ることになった御神木をBAR空間のメインとなる場所で使いたい」という要望を設計の初期段階からいただいていたのです。このカウンターを挟んでお客様と接することによって、「人と人との温もりのあるつながりができれば」とのオーナーの思いが実現されたお店が完成しました。
店舗レイアウトのポイント
店舗内装は、全体のテイストだけではありません。お客様の動きはもちろん、スタッフの導線などを考えたレイアウトにしなければならないのです。店舗の形が正方形に近い場合、導線を考えたレイアウト計画は立てやすいのですが、大抵の店舗は長方形になりますので、お客様の動きとスタッフの動きがバッティングしないようにすることはもちろん、スタッフが効率的な動き方ができるよう考慮する必要があります。同時に、テーブルやイスなどの配置や大きさは、客単価や回転率を考えながら決めることも大切です。客単価をある程度高めに設定し、ゆっくりくつろいでもらうことをコンセプトにしたお店ならば、広めのテーブルやゆったりとしたイスを用意する必要がありますし、短時間の滞在で高回転率を目指す場合(そして客単価も低めの場合)は、テーブルやイスのサイズを控えめにして、客席数を増やす工夫が必要になります。もうひとつ、レイアウト要素とともにお店のイメージを左右するものにトイレがあります。トイレは、その位置もそうですが、大きさや内装・設備も重要です。最近の飲食店は、化粧直しもできるよう女子トイレを大きくし、アメニティを充実する傾向がありますが、女性に利用率が高いカフェの場合は特に繊細な気遣いが必要です。店舗レイアウトは売上や利益に直結してきますので、デザイナーとよく相談し、適切なアドバイスを受けながら決めていくことが望ましい大切な要素なのです。
【mini column 2:居抜きとスケルトンの違い】
「居抜き」は、厨房設備をはじめとする設備機器や什器・内装を、前のお店からそのまま受けついであらたな所有者になることで、「スケルトン」とは、建物の壁・柱・天井などの基礎部分のみで、内装や設備が何もない状態の物件のことを言います。 オーナーの思い通りのお店を作りたいのなら、スケルトンの物件を探し、理想的なレイアウトや内装デザインにすることを目指してください。但し、スケルトン物件は、什器や設備などすべてを揃えなければならないため、費用なども加算される事を把握されるとよいでしょう。 一方、コストを抑えて、スピーディにオープンさせたいのなら居抜きの物件を探しましょう。ただ、目指すお店のイメージに近い物件を探し出すまで、ある程度の時間と根気が必要になります。また、使ってみてから導線の悪さがわかったり、設備が古くて使えないなどの問題が発生する場合もありますので、選ぶ時には入念なチェックが必要です。 (このシリーズでは今後、居抜き物件のみを取り上げ、詳しく解説していく予定です)
いろいろなモノにコンセプトを落とし込む
内装デザインがある程度決まったら、次は店内で使う備品やツール類の準備に取りかかります。具体的には、食器やカトラリー、ナプキン類、メニューブックやメニューボードなどです。資金が潤沢にある場合には店オリジナルの食器を特注することもありますが、そうでない場合はメニューや盛りつけ、使い勝手を考えて既製のものの中から選ぶことになります。ここで注意したいのは、コンセプトにふさわしいテイストのものをチョイスすることです。お客様は、出された器でもお店(オーナー)のセンスを見ていますから、手を抜くことなくこだわって用意してください。 次に、カフェで良く使われるテーブルクロスやランチョンマットは、お金をあまりかけなくてもコンセプトを表現できる貴重なツールになります。既成のペーパーやクロスのままでなく、そこにロゴがさりげなく印刷(または刺繍)されているだけで、オシャレ感が大きく変わります。 また、メニューブックやメニューボードもセンスの見せ所。コンセプトにふさわしいものを用意することが必要ですが、特にメニューボードは内装デザインとも関わってきますので、こちらはデザイナーに相談することをおススメします。
【mini column 3:デザイナーのつぶやき~】
こんな風にはしてほしくない
せっかくオーナーの思い通りのアーリーアメリカンスタイルの内装に仕上がり、本人も「カッコイイね!」と諸手をあげて喜んでいたのに…。開店後しばらくして訪ねてみると、店の外にも中にも蛍光色の紙にマジックで手書きされた“おすすめメニュー”がベタベタ貼られ、とてもチープな印象に。「何が売りなのか、よくわからないから」と言われても、黒板風のメニューボードにするとか、内装イメージにあったやり方はいろいろあるのに…。
内装業者の選び方
デザイナーと直接話ができる業者を選ぶことは必須条件ともいえます。なぜなら、大きな会社では営業担当が出てきて窓口になることがありますが、間に人が入ると、こちらは伝えたつもりでも意思が伝わっていないというケースにつながる場合があるからです。デザイナーにダイレクトに思いやイメージを伝え、そのデザイナーがイニシアティブをとって、施工業者などの専門家とじっくり話し合いながら進めてもらうことが肝要です。繰り返しますが、そのためにもオーナー自身の考えはあますところなくキチンと伝え、あとで後悔しないようにしてください。
店舗内装工事.comの特長
①コンセプトメイクからデザイナーが参画。
必要に応じてアドバイスします。 店舗内装工事.comに店舗内装をお任せいただきますと、担当のデザイナーが最初の打ち合わせから、最後の引き渡しまでお付き合いさせていただきます。また、お店のコンセプトづくりについても、専門家の立場からアドバイス。よりよいデザインのお店ができるよう、努力を惜しみません。
②物件探しにも関与。
物件選定のサジェスチョンも行います。 物件によっては、内装工事にかかる費用がかなり変わってくることがあります。店舗内装工事.comでは、物件探しからサポートさせていただきますが、それは総合的な判断に基づいた店舗デザインのご提案をさせていただくだけでなく、効率とコストの両方を考えた工事費用の算出が可能になるからです。
③設計はお客様と納得のいくまで。
プロとしての立場から助言も行います。 デザイン・設計は、単にお客様の要望をお聞きするだけでなく、密接なコミュニケーションを図ることによって双方が納得のいくカタチを目指します。同時に、お客様のお考えに対しては、プロの立場からアドバイスもさせていただきます。
④完成そして引き渡しの後まで一貫してサポートしますので安心です。
現場管理者を立てての施工管理はもちろん、お客様に満足いただける店舗となるよう、途中のチェック・改善などにも対応いたします。また、万が一引き渡し時に何かしらの不具合があった場合でも適正に対応し、さらに施工後においてもお客様とコミュニケーションを大切にしてまいります。
店舗の内装計画は、飲食店、美容サロン・エステ、物販店、その他、業種によって異なるだけでなく、店舗の立地や諸条件、つくりあげたい雰囲気、呼びたいお客様の層などによって、店舗ごとに大きく異なります。一つひとつのケースに沿って、ご提案させていただきます。